2012年9月9日日曜日

ロケットストーブ付石窯作り7/ヒートライザー

色々イベントが続いたせいもありますが
作業に問題が発生していたため久々の更新に
なりました。

この間にはこの石窯の心臓とも言えるロケットストーブ部分を
作っていました。
製作にあたり参考にしたのが、日本ロケットストーブ普及協会から
発行されているロケットストーブのマニュアル本。
そこにヒートライザー部分の断面積はバーントンネルのそれより
小さくしないようにとの記載があったのを思い出しました。

これに対して前回の燃焼実験に使用した穴あきレンガは
かなり口径が小さいので、穴の口径の大きい方を使用する
ことにしました。

それでもバーントンネルの55%程度の断面積しかありません。(下記)

バーントンネルは、17cm×17cmの正方形=289平方センチ
ヒートライザーは14cm×12cmの角丸四角形≒160平方センチ

燃焼実験で良好に燃焼することは確認したつもりなので
問題はないと思うけど大丈夫かなぁ。。。

で、これに伴いヒートライザーとバーントンネルを
繋ぐために以前作ったパーツも作りなおすことにしました。

スタイロフォーム(4cm厚+2cm厚)をカッターナイフで
削って型を作ります。
型枠用のコンパネに外枠を固定し、ラップで包んだ型を両面テープで
貼り付け、剥離剤(シリコンスプレー)をスプレーし
キャスタブル(アサヒキャスター)を流し込みます。
最近、夜に雨がよく降るのでカバーをして丸1日。
固まったら型から外して耐火モルタルを塗りつけます。
これが耐火モルタルです。楽天で安く買えました。
ヒートセット(熱硬性)です。

さて、設計の段階で、火を使う場所の目地をどうするかは
随分考えました。

ネット上で情報収集してみると、工業炉の築炉工事では
耐火物の目地に耐火モルタルが使われるそうです。
一方、耐火キャスタブルは不定形品を作ったり、コテ塗りで
壁や床を覆う材料であって、目地材ではないとのこと。

但し工業炉は雨や水のかからない屋内に構築されることや
その道のプロが施工されるという点で、そのまま参考に
していいものか迷いがありました。

一方、石窯作りの本やレンガワークを特集した
有名なDIY雑誌には「耐火モルタルは非常に高価」とか
「目地材として耐火モルタルをホームセンターで
買おうとしたら素人には扱いづらいから
キャスタブルを使った方が良いと勧められ
実際それでうまくいった。」などと書かれています。

同じ素人の意見に従った方が良さそうと判断し
目地にキャスタブルを使いましたが結果は悲惨でした。
(詳しくは後ほど)

そこで改めて耐火モルタルのことを調べてみたのです。
そして新たに分かったのが耐火モルタルには
エアーセット(気硬性)とヒートセット(熱硬性)の2種が
あるということ。
更にエアーセットモルタルはかなり高価なのに
対してヒートセットモルタルはキャスタブルより
むしろ安いということ。
(自分が調べた範囲で最安は下記。送料別途)
キャスタブル 25kg→2,000円
熱硬性耐火モルタル 25kg→1,000円
気硬性耐火モルタル 25kg→約7,000円

後から考えると、本の著者はエアーセットモルタルの
ことを指していたり、タダで手に入る粘土と比べたのかも
しれないなと。

ともかくヒートセットなら価格は問題ないことが
分かりました。

扱いづらいというのも、作業性が悪いという意味なのか
超高温にしないと固まらないことを指しているのか
分かりませんが、後者については対策できそうに思います。
そこで作業性については覚悟の上で、耐火モルタルを
取り寄せることにしたのでした。

さて、話は戻って目地材にキャスタブルを使用した
作業について

高熱になる場所の耐火レンガを水に浸けて施工するのは
厳禁とされています。(一旦水が染みたレンガは
簡単に乾かないこと、そして塗れたレンガを熱すると
割れたり水蒸気爆発の恐れがあるためとのこと)

そこで乾いたレンガにキャスタブルを目地として
乗せてみたのですが、キャスターの水分をレンガが
吸ってしまい、あっという間に固まってしまいます。
それも少し押すとパサパサと崩れてしまう感じです。
どんなにキャスターをゆるく(水分多めに)しても
結果は同じでした。

(後日分かったことですが、キャスタブルを
緩く、つまり水分量を多くしたことも失敗の
原因だったようです
水分量を多くするほど乾いた耐火煉瓦が一気に
その水分を吸ってしまうのです。逆に固めに練って
耐火煉瓦との接点を少なくした方が長時間粘度が
保てることが後の作業で分かりました)

キャスタブルが一瞬でレンガに乗せた時の形のまま
固まってしまうので上に乗せたレンガとの間に
隙間ができてしまいます。

そこで目地の厚さを整えようとゴムハンマーで
レンガを叩くと隙間に広がることなくボロボロと
崩れてしまうのです。
いくらなんでも、これでは強度が出ません。

何故、本に書かれてることと違って
こんなに扱いづらいのか?
もしかすると私が買ったキャスタブルは
骨材の割合が多いとか粘り気や保水力の無い製品
つまり雑誌で使われていたのと異なる製品なのかも
しれません。

私の使ったキャスタブルは三石耐火煉瓦さんの
ブログに掲載の石窯作りで使ってるものが
欲しいとお願いして購入しました。

そのブログではドーム型の石窯を作る際に、レンガの間の
大きな隙間(レンガ同士の間が4〜5cm空いてるような)に
流しこむような使い方をされていました。これは目地と
型枠施工の中間的な使い方だと思います。
袋にはアサヒキャスター13とあります。
メーカー(AGCセラミックス)のサイトには13Sと13Tは
掲載されていますが、SもTも付いていない製品は載ってません。
なので13と13S,13Tの違いは私にも分かりません。

購入時はその特性が不明でしたが、後日情報が見つかりました。
http://www.agcc.jp/2005/databank/03_01_01_03.html

ここによればアサヒキャスターCA13の用途は「汎用」との
ことなので流し込みとコテ塗りのどちらもそこそこに
使える製品ということなのかと。

そして耐火物に直接接する所への流し込みの際
境目に防水紙などを挟むと良いということが
上記のサイト内に書かれてありました
確かにこのようにすれば耐火キャスターの硬化不良は
防ぐことができると思いました。

防水紙を挟むと当然ながら接合面は接着されません。

ただ築炉の考え方として、耐火物はキャスタブル等の
接着力に頼って構築するのは間違いで
構造的、力学的に互いを支える(積み方で構造的な
強度を出す)べきだそうなので境目に紙が挟まっている
くらいは、なんら問題無いのだと思います。

何故接着力に頼ってはいけないかというと
耐火物は高熱にさらされたり冷えたりすることで
数mm単位で膨張と収縮を繰り返し接合面もその都度
動いてしまうため、接着で支えているような構造では
保たないためということかと。

また、コテ塗り用の13Tであれば目地材としても
もう少し扱いやすいのかもしれません。

ということで今回耐火モルタルを使うことになるまでに
こんな経緯がありました。

で、耐火モルタルなんですが乾いたレンガに
塗りつけても十分粘りを保っていますし
骨材は細かく滑らかで1〜2mm程度の厚さに
自在に調整できます。
粘りがあるので、塗りつけた所を垂直にしても
下向きにしても大丈夫。
作業性もまったく問題ありませんでした。

やっぱり何でも鵜呑みはいかんなぁと・・・

耐火モルタルの良い所はもうひとつありました。
それは熱を加えない限り固まらないので
施工を焦る必要が無いこと。

暑くなってからというもの普通のセメントと砂で作るモルタルや
キャスタブルを使う作業では、すぐに固まってしまうので
最近の作業は常に時間との勝負でした。

暑さでフラフラの状態でも、練ったモルタルやキャスターが
残っている間は休憩することができず、一度はほぼ熱中症に
みたいなことに・・・。

その点、耐火モルタルは高温で焼成しない限り固まらないので
焦って作業する必要がありません。
更に使い切れずに余ったとしても、少し乾燥したくらいなら
水を加えればまた使えるので、一度に練る量も細かく
調整する必要がありません。

耐火モルタルの唯一の弱点は高熱で焼成しないと硬化せず
雨などで流れてしまう可能性があることくらいですが
石窯全体を断熱のために軽量(断熱)キャスタブルで覆ったり
屋根をかけるつもりなので水がかかる心配はありません。
構造的に強度が出るドーム型なので万一永遠に固まらないと
しても特に問題があるとは思えません。

ちなみに耐火モルタルってキメの細かさや粘性、そして
かなりの高温で長時間焼成しないと固まらないこと、
乾燥によって結構収縮することなどから、かなり粘土に
近いものだと感じました。

もし粘土が簡単に手に入るのであれば耐火レンガの
目地材として十分耐火モルタルの代用品になると思いました。

話が長くなりましたが、作業に戻って

ヒートライザー用のレンガも耐火モルタルを目地にして
隙間なく綺麗に積むことができました。
上の写真、穴の空いた4段のレンガの下に見える灰色の板が
最初に紹介した耐火キャスターで作ったパーツです。
上から覗くとこんな感じ。

このレンガを断熱材で巻きます。断熱材はコレ↓
海外で石窯を作ってる人達がfire blanketと呼んでよく使ってる
製品です。調べてみると日本製で正式な製品名はisowool blanket。
耐熱温度は1200℃と十分です。
お安くしかも小分けで販売されている所を見つけて買ってありました。
こんな風にハサミでカットできますし、手で引っ張れば簡単にちぎれます。
ヒートライザー部分を覆い、金網を巻き針金を
ハッカー(通称クルクル)でクリクリっと捻って固定完了。
ハッカー使うと何だか一端の職人になれたような気になるのは
俺だけですかね。

アッ!写真見て気づきましたが、より断熱性を高めるため
この金網の前にアルミホイルを巻こうと思っていたのに
すっかり忘れてました・・・
石窯本体の時は忘れないようにしなきゃ。
バーントンネルの上をレンガで囲み、パーライトを流し込んで
断熱みたいな。効果があるかは不明ですが。
コンクリートの平板で蓋をして、その上にはレンガを積んで
ヒートライザーを更に断熱材(パーライト)で囲むための壁にします。
ヒートライザー部分も周りにパーライトを入れてみましたが、
かなりの量が必要そうです。これを節約するため、
↑こんな物を使います。
これは自宅の建築の時にもらっておいた断熱材(アイシネン)の欠片です。
アイシネンは紫外線には弱いのですが、熱にはかなり強いらしいです。
石窯の断熱材に使えないかと思って、実際にライターで炙ってみましたが、
表面が少し焦げる程度で燃えたり、縮んだりしませんでした。
こんな感じでアイシネンを詰めました。

隙間にパーライトを充填しました。
これでようやくロケットストーブ部分はほぼ完成しました。
目地部分がある程度乾燥したら、また燃焼実験をしてみようと思います。

4 件のコメント:

  1. 箕面のtakechanです。
    順調のようですね。

    私の方はまだ土台でヒーヒーいっております。

    さてロケットストーブ部分の製作なのですが
    Saluteさんが書いておられる
    「耐火キャスター」というのは
    文面からしてアサヒキャスターの型番なし
    というものなのでしょうか?

    私はまだ窯自体の材料を購入していないのですが
    アサヒキャスターの13Tを考えていました。
    これをヒートライザーや釜本体の耐火レンガの目地にと
    考えていたのですが、やはりこれもパサパサになって難しいのでしょうか・・・ちょっと不安になってきました。
    13と13Tとで骨材の大きさが違うのでしょうかねえ???

    思い切ってレンガを水にぬらして
    ゆっくり乾かすという手段も考えたほうがいいのでしょうか。長野の「ズク」さんはそのようにしているようです。

    釜のアーチ部分はやはり耐火モルタルをお使いの計画でしょうか?よかったら教えてください。

    ロケットストーブに火をいれるとすぐに硬化するとおもいますが、火をいれた後の接着力はどうなっているか興味があります。

    次のUP楽しみにしておきます。


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    1. takechanさん、いつもコメントありがとうございます。
      暑い中での作業大変ですよね。

      私が買った耐火キャスターですが、記事に追記しましたのでそちらを
      ご覧になってください。
      恐らくですが私のは13Sに近い型枠専用の製品なんじゃないかと
      推測してます。いつか三石耐火さんに連絡することがあったら、
      聞いておきますが。

      takechanさんが候補にされている13Tは商品説明にも、
      コテ塗りや団子付けができると記載がありますよね。
      プロが施工する工業炉や焼き物の釜で、炉内
      (つまり乾燥した耐火レンガ)にコテ塗りや団子付けできると
      いうことは、恐らく目地に使うこともできるんじゃないかと
      思うのですが。
      もちろんこれは素人の意見なので購入されるショップで
      確認してくださいね。

      釜のドームの組み方ですが、私は下の2つのどちらかに
      するつもりです。
      レンガを一つずつ綺麗にカットして組むことになれば、
      目地には耐火モルタルを使うと思います。
      レンガをラフな形のまま組むことになれば、三石耐火さんの
      ブログと同じく耐火キャスターを流し込むと思います。
      どちらを選択するかは、カットの大変さ次第かと。

      それから、三石耐火さんに訪問した際教えてもらったのですが、
      耐火レンガの施工では目地にあまり接着性を求めないそうです。
      レンガも目地も熱膨張や収縮を繰り返す、つまりそれぞれが
      動くのでたとえ最初はくっついたとしても、いずれ離れてしまうと。

      だから、接着によって構造を保つような組み方をしてはダメで、
      目地の接着力に頼らず構造的というか力学的に形を保つように
      組むべきとのこと。

      それを聞いて耐火レンガの目地の主な役割は隙間を無くすこと、
      つまりシール材と捉えるべきなんだと思いました。

      レンガを濡らし耐火キャスターの施工性を高めることも
      可能と思います。

      私も耐火性の必要の無い立水栓や石窯土台の施工ではレンガを水に
      十分浸した上で普通のモルタルで積みましたから、前はそれも選択肢の
      一つと思ってました。
      ただ雨で少し湿ったレンガが燃焼実験の最中に、何個も割れる
      ところを実際に見たので、濡れたレンガは簡単に割れるという
      実感があります。

      もしレンガを濡らした場合、どこまで乾燥させれば大丈夫なのか、
      十分乾燥したかどうかをどうやって確かめるのか、判断が難しいだろうと
      思います。
      その上でヒートライザーは割れて崩れたりすると、
      やり直しができない箇所ということから、私の場合は選択肢から
      外すことにしました。

      takechanさんの場合は13Tでレンガを濡らさず目地施工できれば
      ベストじゃないですか。
      まだ先のことと思いますが、上手くいくといいですね。

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  2. いつも参考にさせて頂いている
    Takechan@箕面です。

    熱硬性耐火モルタル25kgが1,000円というのは
    激安ではないですか!?
    私の検索の仕方が悪いのか25kgで2,500円しか
    見つけられません。
    検索条件をどうしたらよいでしょうか
    ヒントください!
    (isowool blanketの購入先もヒントください)

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    1. 耐火モルタルは直接見積をお願いして聞いた
      価格なのでネットでは見つからないと思います。
      ただ、そこは単品だと送料が高くつきますから、
      送料込みの費用で比較すると楽天内の
      お店(タイルオンラインとか)の方が安いです。

      isowoolは下記です。
      http://www11.plala.or.jp/ngs/

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